あなたの道を主に委ねよ 詩篇37:1~7

詩篇37篇は、各区切りが判りやすく、ヘブル語のアルファベットで始められています。全体として、「正しい者」と「悪者」の思想が統一されています。 例えば、1~2節は悪を行う者について語り、3~7節は正しいものの生き方とそれに対する主なる神の祝福について語っています。本日の説教において特に3節の「主に信頼し、善を行え。地に住み、誠実を養え。」を暗唱聖句として取り上げ、「あなたの道を主にゆだねよ。」と題しました。

 ところで、皆さんに二つの質問をします。第一は、皆さんはは自分自身のことをどこまで判っておられますか?心の中にある本当の自分の姿を知っていますか? 第二に、皆さんの心の中にある問題を、どう取り扱って解決へと進みますか? 

先週の月曜日、神岡で開かれた「ほくひ宣教区大会」に出席しました。山口陽一先生から同盟教団の130年の歴史を振り返った、証も交えた良い集会を持つことができました。そこの展示ブースで、学長が編纂された小冊子を手にすることができました。それは山形県にある基督教独立学園高等学校の元校長であり、教育哲学が専門の安積力也先生が東京基督教大学で講演された時のメッセージをまとめたものでした。特に、この小冊子の中で印象的だった記述は、こんな記事でした。そこで、安積力也著<出発する人間>へ 何において“自分を確かに”するか(東京基督教大学2015年度祈祷日講演録)の一部を紹介いたします。

 安積先生が初めて教職について、出会った忘れられない生徒さんの一人のことが書かれています。その生徒は、見るからに優秀で何の心配もない生徒のように思われました。ところが、高校3年の卒業を目前にして、深刻な顔をして相談に来て、自らの心のうちを告白し、「私、このままでは卒業できないんです。」と訴えた。自分は多くの先生や友人、後輩からもしっかりした考えを持っていると思われているが、本当の私は違うのだと。そして自分の頭で考えたことがない。例えば本で読んだ話を論理的にまとめて自分が考えたようにして話しているけど、本当の自分は空っぽなんだと言ってさめざめと泣いたことを。

 先生はそれに対して「あなたはどっかで大切なものをあきらめてしまったみたいだね」と返答すると、一人っ子で可愛がられスムーズに育ってきたが、小学1年生の時に嫌いな算数の宿題が嫌で母親にそのことを強く訴えた時の衝撃。これまで優しかった母親が鬼のようになって怒ったこと、その衝撃が今までずーっと残っていること。そして、彼女は「小さな時から、私は考えちゃいけないんだ、言われた通りのことをしなくちゃいけないんだ。」と思うようになってしまった」。しかし、安積先生と話したら、彼女の頭の奥で凍りついていたものが溶け始めた。そして、毎朝の礼拝の時間に、一人で祈るようになった。神様への祈りは嘘をつかなくていい世界なのだと判った。自分の思いをすべて打ち明けていい。

 教会の皆さんもご存じの方がおられると思いますが、この安積先生とは、私たちの一人息子Tの独立学園入学を通して出会いました。あの時、主の導きで崖の絶壁に立たされている最も困難な状況の中で、先生に出逢えたのは本当に一筋の光でした

 元気で明るくピチピチしていた息子、近所の上級生から受けた“ひどい言葉”と暴力のいじめに遭い、生きるか死ぬかの瀬戸際の状態にまで落ち込み、自らの出生に悩み、不登校となり、家庭内暴力や自傷行為にまで至りました。私は彼と付き合い、身も心も疲れ果てていた時、かつての友人から頂いた独立学園の本を思い出したのです。それを読んで「彼が回復するにはここに行くしかない!」と示され、はるばる遠くまで試験を受けに行きました。その時の最終面接が安積校長とのものでありました。先生からTが出生のことを聞かれ、大粒の涙を流して面接室から出て来ました。その後、私との面接の時、安積校長は次のように言われました。「T君は大変重いものを背負っています。これを克服することは並大抵なことではありません。しかし、これを克服したら、素晴らしい人物になります。」

 安積校長は入学した生徒すべてに「皆さんは、これまで人には絶対見せたことのない自分が心の中にうごめいていませんか?」と質問し、「内なる自己」を認識するよう勧められた。

 先程紹介しました優秀な女子生徒が、全知全能なる神の前に心をふり注いで祈る世界は「嘘をつかなくてよい世界」とわかったのです。私たちには明日のことはわかりません。ですから、日々の祈りの中で、あなたの道を主なる神に委ねましょう。「あなたの道を主にゆだねよ。主に信頼せよ。主が成し遂げて下さる。」(6節)

あなたの人生も波瀾万丈かもしれません。またいつどこで戦争が勃発するかわからない不安な世界です。自分の健康や家族のことなど、心配事はたえません。しかし詩篇作者はこう激励します。「主に信頼し、善を行え。地に住み、誠実を養え。」いつも主に信頼し、祈りによって主から力を受けて信仰の証に励みましょう。(牧師:北林行雄記)

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